全部読み直すのをやめる
文字起こしの修正に時間がかかる最大の理由は、冒頭から順に読んで直していくやり方です。1時間の会議の文字起こしは、全文で1万字を超えることがあります。これを通して読めば、それだけで20分から30分。録音を聞き直すのと大差ありません。
ここで押さえておきたいのは、議事録として配るときに正確である必要がある箇所は、全文の一部だということです。
- 決まったこと、やること、担当、期限
- 金額、数量、日付、件数
- 人名、会社名、製品名、品番
- 条件や例外に関わる言い回し(「ただし」「〜の場合は」)
逆に、言い直しや相づち、話の枝葉の部分は、多少おかしな文字になっていても実務に影響しません。直す対象を絞ると、修正の時間は数分の単位まで落ちます。全文をきれいにすることと、議事録として使えることは別の目標です。
確かめる順番
順番を決めておくと、途中で時間が切れても使える状態になります。
- 1. 決定事項を読む:決まっていないことが決まったように書かれていないか
- 2. やることの担当と期限を見る:担当が会議の実態と合っているか、期限が具体的な日付になっているか
- 3. 数字を拾う:金額、数量、日付、件数を順に見る
- 4. 固有名詞を拾う:人名、会社名、製品名、品番
- 5. 条件つきの表現を探す:「ただし」「〜であれば」が落ちていないか
- 6. 残り全体にざっと目を通す:意味が通らない段落だけ直す
一番目を最初に置くのには理由があります。文字起こしの誤りのうち、実務で最も困るのは、誤変換ではなく「決まっていないことが決定として書かれる」ことです。文字の誤りは読めば気づきますが、決定の有無の誤りは、もっともらしい日本語で書かれているため気づきにくい。だから最初に見ます。
六番目は省いてもよい
時間がないときは、一番目から五番目までで止めてかまいません。要点が正しければ議事録として機能します。全文の体裁を整える作業は、必要になったときに行う形で足ります。
AIが間違えやすい四つの型
AIは間違えます。音声認識は聞こえた音と前後の文脈から言葉を推測する仕組みなので、間違え方には傾向があります。型を知っておくと、探す場所が絞れます。
1 社内だけで通じる言葉
社内の略称、部署の呼び方、取引先の短縮名、自社製品の型番。日常であまり使われない語は、音の近い一般的な語に置き換わります。「カミサン」が「上さん」になる、「ヨコケイ」が「横形」になるといった形です。社内の人が読めば間違いに気づきますが、だからこそ気づかずに配ってしまうこともあります。
2 数字の単位と桁
「ひゃくごじゅう」が150なのか105なのか、「にせんこ」が2,000個なのか2千個なのかは、音だけでは決まりません。とくに金額は、桁がひとつ違うと影響が大きいところです。日付も「ついたち」と「いちにち」のように読みが揺れるため、曖昧になることがあります。数字はまとめて確かめる習慣にするのが早いです。
3 発言者の取り違え
複数の人が続けて話す場面や、声の高さが近い人が同席している場面では、発言の帰属が入れ替わることがあります。決定事項に関わる発言で取り違えが起きると、担当者が別の人になります。誰が引き受けたのかは、会議に出ていた人が確かめるしかありません。
4 曖昧な言い方が具体的になる
「来週くらいまでに」が「10月13日までに」と書かれる、「検討します」が「対応します」と書かれる。もとの発言より強い表現になることがあります。これはAIの不具合というより、会議で曖昧だったことが曖昧なまま残るだけの話です。曖昧な発言が具体的な記述に変換されていたら、会議の場で決まっていたかどうかを思い出して直してください。
直す時間を短くする工夫
やり方を少し変えるだけで、修正にかかる時間は変わります。
- 検索で探す:読むのではなく、「円」「個」「月」「日」「様」「さん」で検索して該当箇所だけ見る
- 社名と人名の一覧を手元に置く:出席者と取引先の正しい表記を並べ、突き合わせる
- 会議の当日に行う:記憶が新しいほど、間違いに気づきやすい
- 直した語を記録する:同じ誤変換は繰り返すので、次に備えて残す
一番目は効果が大きい割に、やっている人が少ない工夫です。金額の確認なら「円」で検索すれば、確かめる箇所が十数か所に絞れます。全文を読む代わりに検索を使う、という発想に切り替えるだけで、作業の性質が変わります。
録音する前にできること
修正の手間は、録音の仕方でかなり決まります。あとから直すより、録音の段階で整えるほうが安く済みます。
- マイクまたは端末を、話す人の近くに置く
- 発言は一人ずつ。同時に話すと、どちらも拾いにくくなる
- 冒頭で出席者が名乗る。発言者の判別の助けになる
- 数字と固有名詞は、ゆっくり、はっきり言う
- 会議の終わりに、決定事項とやることを読み上げる
最後の読み上げがとくに効きます。会議の終わりに「決まったのは3点、やることは2件。順に確認します」と口に出すと、その部分が音声にはっきり残ります。要約の下書きの質が上がるうえ、その場で認識のずれも見つかります。1分から2分で終わる習慣です。
誰が直すか
ここは運用の要になる点です。確認は、その会議に出席していた人が行ってください。出ていない人には、書かれていることが事実かどうかを判断できません。
社内で「文字起こしの修正は事務の担当がまとめて行う」という運用にすると、固有名詞や文章の体裁は整う一方、決定の有無や担当の取り違えは残ります。出席者が要点だけを見て、体裁は別の人が整える。この分担にすると、どちらの長所も活かせます。
もう一点。修正したあとの文書が正とわかるようにしてください。自動でつくられた下書きと、確認済みの議事録が同じ場所に並んでいると、どちらを見ればよいか分からなくなります。確認済みのものに日付と確認者を入れておくと、迷いません。
登録した用語で手間を減らす
HANALOGは、録音するだけで文字起こし・要約・決定事項・アクション(担当と期限)・今後の予定を自動で作成します。PCとスマートフォンのブラウザで使えます。対応ブラウザから、マイクとパソコンの音を録音できます(環境によってはマイクの音だけになります)。会議室に入れるボットは不要です。
修正の手間に直接効くのは、用語の登録です。HANALOGでは、誤変換されやすい表記と正しい表記を登録しておくと、文字起こしと議事録の表記を置き換えられます。上で挙げた「社内だけで通じる言葉」の誤変換は、登録によって減らせる部分です。登録する候補は、毎回直している語そのものです。
- 出席者の氏名、よく出る取引先の正式名と略称
- 自社の製品名、型番、サービス名
- 部署名、拠点名、工区や店舗の呼び方
- 業界で使う語のうち、一般的でないもの
一度に全部登録しようとせず、直した語を2週間ほど書き溜めてから登録するほうが、使う語に絞れます。ただし、登録しても誤りが出ないとは言えません。確認の工程は残してください。
できあがった議事録はWordとPDFで書き出せます。社内の様式に合わせる場合は、Wordで書き出してから整える使い方ができます。
録音は参加者の同意を得てから
会議の録音には参加者の同意が必要です。社外の方が入る打合せでは、冒頭で「記録のために録音します」と伝えてください。データの扱いについては、HANALOGでは音声は文字起こし後3日で削除(設定で残す場合も最大30日)、AIの学習には使わず、解約・退会から30日で全削除という扱いです。社内で共有しておくと、聞かれたその場で答えられます。
まず1回、時間を計る
修正にかかる時間は、感覚で語ると社内の議論がかみ合いません。一度測ってみてください。
- 次の会議で、文字起こしの修正にかかった時間を計る
- 上の順番(決定事項→担当と期限→数字→固有名詞→条件)で直し、もう一度計る
- 直した語を一覧にして、よく出るものを用語として登録する
- 3回目にもう一度計り、1回目と比べる
数字が出ると、社内で続ける理由を説明できます。「速くなった気がする」では、ほかの業務に押されて止まります。15分かかっていた修正が5分になったという事実があれば、運用として残ります。
AIの文字起こしは、人の確認を置き換えるものではありません。確認する場所を絞り込むための道具として使うと、無理なく収まります。有料プランの内容は料金ページをご確認ください。
用語を登録して、確認の手間を減らす。
HANALOGの無料プランは毎月3時間まで・期限なしで、クレジットカードの登録は不要です。カードを登録しないため、自動で課金されることはありません。

