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建設業の打合せ簿|追加・変更と費用の合意を記録に残す

現場で発注者や元請から「ここ、こうしておいて」と言われる。その場で引き受けて作業は進み、請求の段階で「それは当初の範囲に入っている」と返ってくる。建設業の打合せ記録が費用に直結するのは、この場面があるからです。追加・変更の合意をどう残せば、あとから追えるのかを整理します。

目次
  1. 口頭の指示が費用になるまで
  2. 打合せ簿に残す項目
  3. 追加・変更の書き方
  4. 誰が確認して確定させるか
  5. 打合せの音声から記録をつくる
  6. 契約・法令に関わる部分
  7. 1件の現場から始める

口頭の指示が費用になるまで

追加・変更の話がもめるとき、たいてい次のどこかが抜けています。

  • 誰が指示したのかが分からない(発注者の担当者か、現場監督か、設計か)
  • いつ言われたのかが分からない
  • 当初の範囲に入るのか、追加なのかが、その場で整理されていない
  • 費用と工期への影響を伝えたかどうかが残っていない
  • 相手が社内で承認を取ったのかが確かめられていない

現場では、指示を断れない事情があります。工程を止めれば後続の職種に影響が出るので、先に手を動かす判断は現実的です。問題は、手を動かしたことが記録に残らないまま請求の段階まで進むことです。

記録が残っていれば、交渉の形が変わります。「3月12日の打合せで、○○様から追加の指示を受け、費用と工期に影響が出る旨をお伝えしました」と言えるかどうか。これが言えると、相手も社内の経緯を調べられます。言えないと、現場の記憶と相手の記憶を突き合わせる話になります。

打合せ簿に残す項目

様式は元請や発注者の指定があればそれに従いますが、記載しておきたい中身はおおむね共通です。

  • 日時と場所:現場名、工区まで特定できる形で
  • 出席者:会社名と氏名。役職も入れる
  • 協議した内容:何が論点だったか
  • 決まったこと:決定の内容と、決めた人
  • 保留:決まらなかったことと、判断の時期
  • やること:担当(会社名と氏名)と期限
  • 追加・変更の有無:当初の範囲か、追加かの整理
  • 費用と工期への影響:影響があるか、金額や日数は後日提示か
  • 次回の協議:日時と議題

「決めた人」を書く

七番目と八番目が費用に直結する項目ですが、実務でいちばん効くのは四番目の「決めた人」です。「変更することになった」ではなく「○○様の指示により変更する」と書く。主語を入れておくと、あとから経緯をたどれます。相手の社内で担当者が代わったときにも、記録として機能します。

追加・変更の書き方

追加・変更の記録には、三つを分けて書くのが要点です。

  • 当初はどうだったか:図面番号、仕様書の該当箇所、見積の項目
  • どう変えるか:場所、数量、仕様
  • 影響:費用、工期、他の職種への波及

一番目を書いておくと、追加かどうかの議論が具体的になります。「当初図面A-12では○○仕様、今回の指示は△△仕様に変更」と並べて書けば、範囲の話が記憶の突き合わせになりません。

その場で金額を言わなくてよい

打合せの場で金額を即答する必要はありません。むしろ、根拠のない概算を口にすると、それが基準になってしまいます。記録に書くのは「費用に影響が出るため、後日見積を提出します」という事実で足ります。大事なのは、影響があることを現場で伝え、その事実を残すことです。

軽微に見える指示も残す

金額の小さい変更は、その場で引き受けて記録せずに終わりがちです。ところが現場では、小さな変更が積み上がって最後に大きな差になります。1件ずつ残しておけば、「この現場では追加指示が17件ありました」と並べて示せます。並べられると、交渉の性質が変わります。

誰が確認して確定させるか

記録は、書いた時点ではまだ自社の覚え書きです。相手と内容が一致していることを確かめる工程を置くと、記録の意味が変わります。

  • 打合せの当日か翌日までに、内容を文字にして相手へ送る
  • 相違があれば返してもらう旨を一文添える
  • 相手の署名や押印をもらう運用がある現場では、それに従う
  • 自社では、現場責任者が内容を確認してから送る

二番目を入れておくのが現実的です。署名をもらう運用が難しい相手でも、「内容に相違があればご連絡ください」と添えて送った記録が残れば、一方的な覚え書きとは扱いが変わります。送った日付が残る形で送ってください。

確定した記録と下書きを混ぜない

自動でつくられた下書きと、相手に送って確定した記録が同じ場所に並んでいると、どちらを見ればよいか分からなくなります。確定したものに日付と確認者を入れ、保管場所を分けてください。請求や交渉の段階で探すのは確定した記録のほうです。

打合せの音声から記録をつくる

現場の打合せは、終わればすぐ次の作業に移ります。事務所に戻って記録を起こす時間が取れないことが、記録が残らない最大の理由です。

HANALOGは、録音するだけで文字起こし・要約・決定事項・アクション(担当と期限)・今後の予定を自動で作成します。打合せの場で録音しておけば、協議した内容と決まったことが文字として残るので、手の空いた時間に確認して整える形が取れます。PCとスマートフォンのブラウザで使えるので、現場事務所のPCでも、スマートフォンを持って立ち会う形でも使えます。Android アプリは Google Play で公開しており、iPhone アプリは公開に向けて準備中です。発注者とのオンライン打合せでは、対応ブラウザから、マイクとパソコンの音を録音できます(環境によってはマイクの音だけになります)。

できあがった記録はWordとPDFで書き出せます。元請や発注者の指定様式がある現場では、様式そのものを置き換えるのではなく、Wordで書き出して必要な項目を転記するもとの記録として使うのが現実的です。

建設の言葉は誤変換されやすい

AIは間違えます。音声認識は聞こえた音と前後の文脈から言葉を推測するため、日常であまり使われない建設の言葉は、音の近い一般語に置き換わることがあります。躯体、巾木、法面、割付、天端、ふかし、呑み込みといった語、図面番号や通り芯の呼び方、協力会社の略称は、まさにその対象です。

HANALOGでは、誤変換されやすい表記と正しい表記を登録しておくと、文字起こしと議事録の表記を置き換えられます。よく出る工区名、図面の記号、協力会社の略称を登録しておくと確認の手間が減りますが、それでも誤りが出ないとは言えません。追加・変更の記録では、数量、寸法、金額、図面番号、相手の氏名を、相手へ送る前に確かめる工程を置いてください。この5点を見るだけなら、文書全体を読み直す必要はありません。

録音は参加者の同意を得てから

打合せの録音には参加者の同意が必要です。発注者や元請が入る場では、冒頭で「記録のために録音します」と伝えてください。相手が難色を示す場合は、録音せずに、終わりに決まったことを口頭で読み合わせる形に切り替える判断もあります。データの扱いを聞かれることもあります。HANALOGでは音声は文字起こし後3日で削除(設定で残す場合も最大30日)、AIの学習には使わず、解約・退会から30日で全削除という扱いです。社内で共有しておくと、その場で答えられます。

契約・法令に関わる部分

建設工事では、契約内容の変更について書面での取り扱いが定められている場合があります。公共工事や、元請との契約に基づく変更手続きでは、所定の様式と承認の流れがあり、現場の打合せ記録がそれを代替するものではありません。

本稿で扱っているのは、所定の手続きを置き換える話ではなく、現場で交わされたやりとりを残し、正式な変更手続きや見積提出のもとになる材料にするという話です。どの変更にどの手続きが必要か、記録をどの期間保存する義務があるかは、契約の内容と工事の種類によって変わります。契約書の条項を確かめ、判断に迷う場合は社内の積算・契約の担当や、顧問の専門家に確認してください。

1件の現場から始める

全現場で一度に様式を整えようとすると、様式を決める会議が増えて止まります。現場を1件選んでください。

  • 進行中の現場を1件選び、発注者・元請との打合せを記録の対象にする
  • 上の項目から、追加・変更の有無と、費用・工期への影響の2項目を加える
  • 打合せの翌日までに、内容を相手へ送る運用を2週間続ける
  • 2週間分を並べ、追加・変更に該当した件数を数える
  • 件数と内容を、社内の積算・営業の担当に見せる

四番目と五番目まで進めてください。記録を残すこと自体を目的にすると、現場では「また書類が増えた」と受け取られます。残した記録で1件でも追加費用が認められた事実があれば、続ける理由を説明できます。

打合せ簿は、相手を追い込むための書類ではありません。合意した内容を双方が同じように思い出せるようにするための記録です。有料プランは個人プランが月2,200円(税込)、ビジネスプランが1ユーザーあたり月2,200円(税込・年払いは月あたり1,980円)です。詳しくは料金ページをご確認ください。

次の現場打合せから、記録を残してみる。

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執筆:一般社団法人中小企業販促・DX支援協会