議事録が重いのは、会議の設計が曖昧だから
議事録に時間がかかる会議には、共通点があります。始まる前に「この会議で何を決めるのか」が固まっていないことです。目的が定まっていない会議は、話が出た順番に流れていきます。記録する側は、流れた話を後から並べ替えて、どれが決定でどれが雑談かを仕分けることになります。この仕分けが、議事録づくりでいちばん時間を食う工程です。
逆に、開始前に「今日は運搬業者の切り替えを決める」と一行書いてあるだけで、記録の焦点が定まります。書き手は、その一行に関係する発言を拾えばよくなります。関係しない話は「その他」に1行置けば済みます。会議の設計とは、記録の設計でもあります。
準備の時間は、30分もあれば足ります。議題を並べ、それぞれに何を求めるかを書き、時間を振る。この30分が、会議後の1時間を削ります。準備をしない会議は、参加者全員の時間を後払いで使っているだけです。
議題を「決める・共有する・相談する」に分ける
アジェンダに議題を書くとき、多くの人は名詞で書きます。「新工場の件」「来月の販促」「クレーム対応」。これだと、参加者はその議題で何を求められているのかがわかりません。発言すべきなのか、聞いていればいいのかも判断できません。結果として、報告のつもりだった議題で議論が始まり、決めるはずだった議題が時間切れになります。
議題ごとに、次の3つのどれかを書き添えてください。
- 決める:この場で結論を出す。決めないと次の工程が止まるもの
- 共有する:報告を聞いて認識を揃える。質問は受けるが結論は出さない
- 相談する:結論は出さないが、意見を集めて持ち帰る
この3つが分かれていると、会議の途中で「これは今日決めるんでしたっけ」というやり取りが消えます。進行役も「この議題は共有なので、ご意見は次回までに」と切りやすくなります。
「決める」議題には、選択肢まで書いておく
決める議題は、選択肢を先に書いておくと会議が短くなります。「運搬業者の切り替え:A社に切り替える/現行のまま単価交渉/半年保留」のように、3つ程度並べます。選択肢が並んでいると、会議は「どれを選ぶか」の話から始まります。選択肢を作るところから会議で始めると、それだけで20分が消えます。
「共有する」議題は、資料を先に配る
共有だけの議題を会議の場で読み上げるのは、時間の使い方としてもったいないやり方です。資料を先に配り、会議では質問だけを受けます。読んでこない人がいる、という反論はもっともです。その場合は共有の議題を3分に区切り、読んでいない人はその3分で目を通す、という運用にします。
アジェンダに書く項目は5つ
アジェンダは凝った書式にしないほうが続きます。A4の紙1枚、あるいはメール本文に収まる量で十分です。書く項目は次の5つに絞ります。
- 日時、場所、出席者(誰が欠けると決まらないかも書く)
- この会議の目的を一行で(「◯◯を決める」と動詞で終える)
- 議題ごとに、種類(決める/共有する/相談する)・所要時間・担当
- 事前に読んでおく資料の名前と置き場所
- 決まらなかった場合に、いつ・どうやって決めるか
最後の項目は抜けがちですが、入れておくと会議の終わり方が変わります。「今日決まらなければ、金曜までに製造部長と私で決めて共有する」と書いてあれば、結論が出なくても宙に浮きません。決まらないこと自体は珍しくありません。決まらなかったときの手順がないことが問題です。
時間配分は、議題の種類ごとに変える
議題に時間を振るとき、均等割りにしないでください。種類によって必要な時間が違います。目安として、共有は1件3分から5分、相談は10分、決めるは15分から20分を見ます。この配分で組むと、60分の会議に入る「決める」議題は2件が上限だとわかります。
ここで、議題が入りきらないことに気づく会議が多いはずです。それは会議が悪いのではなく、これまで時間を測らずに詰め込んでいたということです。入りきらない議題は、別の日に回すか、担当者同士の打ち合わせに落とします。全員を集めた場で扱う必要がある議題だけを残します。
時間を書いたら、会議中にその時間を守る役を決めます。進行役が兼ねてもかまいませんが、議論に入ると時間を見なくなります。若手に「残り5分です」と声を出す役を任せると、うまく回ることがあります。
配るのは前日の夕方まで
アジェンダは、会議の前日の夕方までに配ります。当日の朝に配ると、現場に出ている人は見られません。前日の夕方であれば、翌日の段取りを考えるついでに目を通してもらえます。配る手段は、社内で普段使っているもので十分です。新しい仕組みを増やすと、それ自体が定着しません。
配ったあとの反応は、会議の予測に使えます。「この議題、うちの部の数字がないと決められません」と返ってきたら、その場で資料を用意してもらいます。何も返ってこない議題は、当日も意見が出にくいと考えておきます。配って終わりにせず、返信を一度見ておくだけで、当日の進み方が変わります。
直前に議題が増えることもあります。その場合は追加分をアジェンダの末尾に置き、既存の議題の時間は削りません。割り込みで先頭に入れると、本来決めるはずだった議題が押し出されます。
アジェンダをそのまま議事録の骨にする
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。アジェンダの議題を、そのまま議事録の見出しにします。会議が始まる前に、議事録のファイルを作り、議題を見出しとして並べておきます。各見出しの下に「決まったこと」「保留」「担当と期限」の3行を空で置きます。会議中はこの空欄を埋めるだけになります。
この作り方だと、白紙から書き始める工程がなくなります。見出しを考える時間も、話を並べ替える時間も要りません。決める議題には結論が入り、共有の議題には「共有のみ」と一行入ります。相談の議題には出た意見を箇条書きで残します。
録音から下書きを起こす道具を使う場合も、骨を先に用意しておくほうが結果は整います。HANALOGは決まったことを話題の塊ごとに切り出して並べますが、その並び順がアジェンダの順と一致するとはかぎりません。骨が先にあれば、切り出された塊を該当する見出しの下へ落としていく作業が数分で終わります。
もう一点だけ断っておくと、自動で起きた下書きは、そのまま配れる完成品ではありません。「五十万」が「五十枚」に、「A棟」が「駅塔」に化けることがあり、社内でしか使わない略称や取引先の社名も同じように書き換わって残ります。ここでアジェンダが二度目の働きをします。直す場所は「決める」議題の周辺に集まっているからです。その議題の結論と、結論に乗っている数字と日付、それから担当者の名前。並べた選択肢のどれが選ばれたのかが読み取れれば、配れる状態です。なお、録音するなら、その旨を参加者に告げて承諾を取るのが先です。外部の方が同席する回ほど、この一言を進行役の定型文にしておくと安全です。
アジェンダがあっても、決めるのは人
アジェンダを丁寧に作っても、決まらない会議はなくなりません。判断に必要な数字が揃っていない、決裁できる人が欠席している、感情のもつれが議題の裏にある。こうした理由は、書式では解けません。アジェンダができるのは、決まらなかったことを「決まらなかった」とはっきり残すところまでです。
それでも、はっきり残る価値はあります。何が決まらず、次にいつ誰が決めるのかが書いてあれば、同じ議論を来月もう一度やらずに済みます。困るのは、結論が出ないことそのものではありません。出なかったという事実が、どこにも書かれずに消えることです。
そのうえで、書式の外に残る判断があります。ひとつは、議題に載せるかどうかです。全員を集めた場で扱う話か、担当者二人で片づく話か。この選別は書式ではできません。載せない議題を決められる人がいる会議は、それだけで短くなります。
ふたつ目は、延ばすか打ち切るかです。予定した15分で結論が出ないとき、あと10分粘れば決まるのか、材料が足りずに今日は決まらないのかを、その場で見分けます。粘る判断も、次に送る判断も、進行役が引き受けるしかありません。
三つ目は、決まったことが動いているかを見に行くことです。担当と期限が入った行は、書かれた時点では約束にすぎません。翌週それが進んでいるか確かめる人がいない会議では、記録だけが整った状態で溜まります。次の会議の冒頭で、前回の行を上から読み上げる時間を3分取る。これだけで、アジェンダは実行の道具になります。
準備と道具でできるのは、会議の前後の手間を減らすところまでです。いま挙げた三つに使える時間を増やすための道具だと考えてください。手をつけるなら、次の定例会議のアジェンダで、議題の後ろに「決める/共有する/相談する」を一語ずつ足すところからです。
アジェンダの見出しが、そのまま議事録の見出しになる運用へ。
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