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議事録の当番制が続かない理由|担当者に寄りかからない運用に変える

1時間の会議に対して、議事録づくりに40分。当番を置いている職場でよく聞く数字です。その当番表も、3か月ほどで更新が止まり、壁に紙だけが残ります。止まる原因は、担当者の意欲ではなく、当番制という仕組みの側にあります。どこで止まるのかを分解したうえで、書く人に寄りかからない運用への移し方を見ていきます。

目次
  1. 当番制が止まるのは、やる気の問題ではない
  2. 若手に回したときに、何が起きるか
  3. 属人化した議事録は、退職で消える
  4. 書く人ではなく、確認する人を決める
  5. 型を決めて、判断を減らす
  6. 当番制からの移行手順
  7. 仕組みにしても、確認する人は要る

当番制が止まるのは、やる気の問題ではない

議事録の当番制は、参加者が持ち回りで作成を担当する仕組みです。一見すると公平ですが、実際には次のような形で止まります。

  • 当番が会議を欠席し、そのまま議事録が作られない
  • 作成が翌週に回り、内容を思い出せなくなる
  • 何度か抜けたあと、誰も指摘しなくなる
  • 結局、書くのが速い人が毎回引き受けるようになる

共通しているのは、議事録づくりが会議のあとに残る「余った仕事」になっている点です。会議が終わった時点で、参加者の関心はすでに次の業務に移っています。当番だけが、1時間前の会話を思い出す作業を抱えることになります。

この構造がある限り、当番表を作り直しても同じ場所で止まります。順番を守れという指示や、当番表の見える化では解決しません。作業そのものの重さが変わっていないからです。

若手に回したときに、何が起きるか

当番は若手に集中しがちです。勉強になるから、という理由が付きます。意図は分かりますが、実際には次のことが起きます。

発言できなくなる

書きながら議論に参加するのは、かなり難しい作業です。発言の内容を追いながら文章にしていると、自分が口を開くタイミングを失います。若手が黙ったまま座っている会議が定例化すると、意見を出す練習の場がひとつ減ります。

用語が分からない

型番、工程名、取引先の略称、社内だけで通じる符丁。経験の浅い人には、そもそも何と言っているのかが聞き取れません。「あの現場」「例の件」で話が進むと、書いた本人にも後から読み返せない議事録ができあがります。

決まったかどうかを判断できない

議事録の要は、決まったことと、決まっていないことを分けることです。この判断には、その場の力関係や過去の経緯の理解が要ります。経験の浅い人ほど、役職の高い人が言ったことを決定として書きがちです。あとで「あれは意見として言っただけ」となり、記録の信頼が下がります。

つまり当番制は、判断材料を一番持っていない人に、一番判断が要る作業を渡す形になりやすい仕組みです。品質が揺れるのは当然で、本人の能力の問題ではありません。

属人化した議事録は、退職で消える

もうひとつの問題は、当番制がうまく回っているように見える職場でも起きます。特定の人が書き続けている議事録は、その人の頭の中と一体になっています。

  • 「A社の件」が何を指すか、書いた本人しか分からない
  • 決定の背景が省略され、結論だけが並んでいる
  • 保管場所が個人のPCやメールの送信済みフォルダになっている
  • 書式が本人の慣れに合わせて少しずつ変わっている

この状態でその人が異動や退職をすると、議事録は残っていても読めない資料になります。2年前の取り決めを確認したいときに、ファイルは見つかるのに意味が分からない。取引先との条件や、設備の仕様変更の経緯で、これが起きると実害が出ます。

断っておくと、属人化は仕組みを変えれば消える、という単純な話ではありません。その場にいた人しか知らない文脈は、どこまで書いても残ります。それでも、誰が書いても同じ場所に同じ項目が並ぶ状態にしておけば、読めなくなる範囲は狭くできます。狙うのはそこです。

書く人ではなく、確認する人を決める

発想を変えます。当番で決めるのは「書く人」ではなく「確認する人」にします。

会議の音声から下書きが起きる仕組みを挟むと、終わった直後に、決まったことが行として並んだ状態が手元にできます。人の仕事は、その行を確かめて直すところから始まります。思い出す工程と、白紙から書き起こす工程が、まとめて前に倒れます。HANALOGの場合、会議が終わるころには下書きが開ける状態になっているので、記憶が新しいうちに確認へ回せます。

すると、当番の役割が変わります。

  • 会議中:議論に参加する(書かない)
  • 会議直後:できあがった下書きを開く
  • 確認:決まったことと、まだ決まっていないことの並び分けを直す。あわせて金額・納期・型番の数字を見る
  • 共有:その日のうちに配る

確認役なら若手でも務まります。ゼロから要点を選び出すのと、並んでいるものが合っているかを見るのとでは、必要な経験の量が違います。むしろ、用語に慣れていない人が確認役に入ると「これは何のことですか」という質問が出て、社内の略称が言葉として定義され直します。これは副産物として大きい効果です。

型を決めて、判断を減らす

確認する人を決めても、何を残すかが人によって違えば品質は揺れます。項目を先に固定します。

  • 決定事項(決まったこと)
  • 保留(決まっていないこと、次にどこで決めるか)
  • アクション(誰が、何を、いつまでに)
  • 次回の予定

この4項目以外は書かなくてよい、と決めるのが要点です。会議の発言を漏らさず残すことを目的にすると、作業量が読めなくなり、忙しい週から順に抜けていきます。残す量に上限を決めるほうが続きます。

あわせて締切も決めます。現実的なのは「当日中」です。翌日以降にすると、確認の前提になる記憶が薄れ、結局は録音を聞き直すことになります。当日中に出すためには、会議の終わりに5分を確保しておくのが確実です。

社内に決まった様式があるなら、4項目をその様式のどの欄へ入れるかも、先に対応づけておきます。欄の対応が決まっていれば、確認役が毎回そこで迷わずに済みます。様式のほうを4項目に寄せて作り直せるなら、そのほうが手数は減ります。

当番制からの移行手順

一度に全部の会議を変える必要はありません。1つ選んで試すほうが、判断材料が得られます。

  • 対象を1つ選ぶ(定例で、参加者が固定で、決め事が出る会議)
  • 録音する旨を冒頭で伝え、参加者の了解を取ってから始める
  • 1か月、当番は「確認する人」として回す
  • 4週目に、作成にかかった時間と、あとから修正が入った回数を見る
  • 問題がなければ、次の会議に広げる

最初の1か月で評価するのは「議事録が出た回数」です。品質の議論はそのあとで足ります。出ていない議事録は、直しようがありません。

向いていない会議もあります。雑談から着想を出すような場や、決め事が出ない情報共有だけの会議は、記録を作っても読まれません。逆に、工程会議や商談の振り返りのように、決まったことが後の作業に直結する会議から始めると、効果が見えやすくなります。

仕組みにしても、確認する人は要る

下書きが自動で出る形にしたあとも、確認する人を外して回すことはできません。理由は二つあり、どちらも道具の側では埋まりません。

ひとつは、下書きの文字そのものがずれることです。型番の「300万」が「30万」になっていた、という取り違えは起こります。「来週の金曜」と話した約束が、日付に直らないまま行として残ることもあります。工程会議や商談の記録であれば、数字と納期を一度目で追うだけで、たいていの事故は止まります。

もうひとつは、決定と意見の切り分けです。下書きは発言の順に並びます。役職の高い人が「まあ、やってみたら」と言ったひと言も、決定の候補として上がってきます。これが決定なのか、その場の感想なのかは、会議に出ていた人にしか判断できません。この記事の前半で、経験の浅い当番がつまずくところとして挙げたのと同じ判断が、確認役の側に移っただけです。ここだけは移した先でも人が持ちます。

確認役を固定しないことも、あわせて決めておきます。同じ人が毎回見ていると、数週間で読み流しになります。当番表を捨てるのではなく、書く人の当番表を、確認する人の当番表に置き換える。誰が確認したかを記録の末尾に一行残しておけば、後から誰に聞けばよいかも分かります。

当番制をやめても、議事録の仕事は残ります。移るのは、負担のかかり方です。一人が1時間抱える形から、参加者が数分ずつ確認する形へ移ります。合計の時間は減りますが、ゼロにはなりません。そこを見誤ると、導入したのに続かない、という同じ結末になります。

1つの定例会議で、4週分の記録が同じ書式で並ぶところまで来れば、その時点で当番表のほうが要らなくなっています。

当番を待たずに、議事録が出る状態にする。

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執筆:一般社団法人中小企業販促・DX支援協会